tenderless



「女ってのは何で泣くんだろうな…」
 パズは煙草を咥えたまま、独り言のように呟いた。
 頬の辺りの人工皮膚が腫れているように見えたのは、サイトーの気のせいではなかったらしい。
「お前が泣かすようなことするからだろ」
 毎度のことなので、サイトーは呆れながら吐き捨てた。
「俺は俺のやり方で優しくしてやってるつもりだ」
「どうやって?」
「俺みたいなろくでなしに本気で惚れる前に別れてやる。これが優しさ以外の何だっていうんだ?」
 サイトーは溜め息と煙草の煙を一緒に吐き出した。
「相手に伝わらない優しさなんざ、優しさじゃねぇよ。そいつは自己満足のエゴってもんだ」
「…なるほど」
 サイトーの言葉には優しさの欠片もない。パズのゴーストを容赦なく切りつける。
 けれどパズにはそれが心地よかった。
「………なぁ、サイトー」
「何だ?」
「俺がいなくなったら、お前は泣くか?」
 一瞬何を言われたのか理解できず、サイトーは隣りで紫煙をくゆらせる男の横顔を見つめた。
「…馬鹿野郎。甘えたきゃ、女のところに行け」
 サイトーはやはり優しくない。
 引き金を引く刹那に一切の私情は挟まない。そんな男だ。
 だからこそ、パズはサイトーに背中を預けることができる。
「だが、そうだな。…もし、お前が死んだら嘲笑ってやるよ」
「…酷い男だ」
 パズは短くなった煙草をフェンスの外へ投げ捨てた。
「じゃあな」
「あぁ」
 潜入捜査に入る男の背中を見送って、サイトーは地面に投げ捨てた煙草を脚で踏み消した。



Fin



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