灯火



 だるい身体を白いシーツに横たえて、サイトーはそれを見つめていた。
 パズが吸っている煙草の先に灯る赤い光が何かを連想させる。
(あ………そうか)
 高いビルの屋上から。もしくはティルトローターから見る鉄塔の登頂の赤いランプ。
 パズの呼吸に合わせて点滅する光は、サイトーの脳裏にそれを思い起こさせた。
 無機質で機械的に光るだけの灯り。しかし、それは人の営みがそこにあることを示している。
 しばらく前まで、否、パズがここに来るまで、このセーフハウスにはサイトー以外誰も来ることはなかった。
 今はパズがいる。自分以外の命がそばに在る。
 それが何だか不思議で、サイトーはずっとパズの灯火を見つめていた。
「…起きてたのか?」
 低い心地のいい声がサイトーの耳に届く。
「あぁ」
 目を瞑ればすぐに眠りに落ちていけるほど疲れてはいたけれど。
「寝とけ。バックスに潰れられるとフロントが困る」
「そう思うなら少しは手加減しろよ」
「お前相手に? 無理だな」
 視界をパズの手のひらで覆い隠された。
「…パズ」
「何だ?」
「……いや…何でもねぇ」
「そうか」
「…おやすみ」
「あぁ」
 パズの手のひらが離れていく。
 落ちていく意識の中で灯火が僅かに揺れて、やがて見えなくなった。



Fin



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