Not Automatic



 パズのセーフハウスに入ると、壁に見慣れないものが掛けてあった。
 古い木製のダーツの的だ。
「パズ。お前、ダーツもやるのか?」
「…ボーマがくれたんだ。インテリアみたいなもんだな」
「ふ〜ん」
「それより、おでんと熱燗でいいのか?」
「あぁ」
 サイトーがソファに腰を下ろしたのを確認すると、パズはキッチンへと姿を消した。
 料理が出来上がるまで手持ち無沙汰になり、サイトーはじっとダーツの的を見つめた。的の下の方に矢が3本セットされている。
 サイトーはソファから立ち上がると、ダーツの的に近寄った。
「…ん?」
 よく見れば、的の真ん中にひびが入っている。
(ボーマのやつ、壊れ物をパズに押し付けたのか?)
 サイトーは矢を取ると、少し離れた場所に立つ。
 ダーツのルールなど、まるで知らない。検索をかけるのも面倒で、射撃と同じく的の真ん中を狙うことにした。
 的に向かって矢を投げる。
 サイトーが放った矢は的から大きく外れ、白い壁に突き刺さった。
「ヤベ…!」
 慌てて駆け寄り、壁から矢を抜く。
 キッチンの気配をうかがうと、こちらに気づいている様子はなく、サイトーはそっと胸を撫で下ろした。
「………あ………」
 しかし、よく見てみれば、壁には小さな穴がいくつも開いている。
 パズも外していることを知り、何だかおかしくて、サイトーは思わず笑ってしまった。
「サイトー。先に軽くつまめ…って、何してんだ?」
 壁に向かってしゃがみ込んでいるサイトーを見つけ、パズがぎょっとしたような声を上げた。
「あぁ、すまん。なかなか当たらないものだな」
 サイトーは立ち上がると、ダーツの矢をパズに掲げて見せた。
「…あぁ。外したのか?」
「あぁ。すまん」
「特A級のスナイパーが情けないな」
「狙撃とこれはさすがに勝手が違う」
「そうか?」
 パズはつまみをテーブルに置くと立ち上がった。

   ドカッ!

 鈍い音とともに、的の真ん中に大型ナイフが突き刺さる。
「要領はこんな感じだ」
 それは違うだろ。
 その呟きは、呆れたような溜め息とともにサイトーの口から零れ落ちた。



Fin



久保ミミ様からの5555Hitリクエストその2/『ダーツをするパズサイ』
リクエストありがとうございました。





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