ルーズな男たち -about them-

　ポケットのに手を入れたままキスしようとすると、面倒くさがるなと怒られた。
「手が汚れてる」
「女でも抱いてきたか？」
「それもある」
「俺は人を殺してきた」
「すがりついてくれてもいいぞ」
「するか。阿呆」
　ポケットに手を入れたままキスをする。
　舌を絡めて、吸い上げて。
　壁際に追い詰めてはだけたシャツから覗いている首筋に歯を立てると、腹に重たいボディブローをお見舞いされた。
「調子に乗るな」
　立ち去る背中を見送って宙に視線を送ると、見計らったように電通が届いた。
≪盛るならよそでやれ≫
≪妬くなよ。イシカワ≫
≪妬いてねぇよ。少佐にばれてみろ。二人とも絞められるぞ≫
≪少佐が見つける前にデータを消してくれてることには感謝してる≫
≪なら今度酒でも奢れ≫
≪了解≫
　薄暗いダイブルーム。
　イシカワが見つめる画面の中で、ポケットに手を入れたまま男が去っていく。
「やれやれ…面倒くせぇなぁ…」
　イシカワは煙を吐き出し、煙草を灰皿でもみ消すと、データを消去した。

Fin

P×S menuへ／ text menuへ／ topへ