Suit
自分は冷たい人間ではないかと初めて思った。
サイトーがロッカールームに入るとそこには先客がいた。
「よぉ。今戻りか?」
「お前もか?」
「あぁ」
先客であるパズはシャワーを浴びた後なのか、スラックスに白いシャツを羽織っただけの姿だ。肌蹴た前から、素肌が垣間見える。
対するサイトーは各官庁を回る荒巻課長の護衛のため、今日の服装はダーク・スーツだ。
「珍しい恰好をしているな」
「オヤジの護衛でな」
サイトーはロッカーを開けると、ネクタイを軽く緩めた。
「普段はシャツの前もろくに留めてもないだろう? そういうきっちりした格好は苦手なのかと思ってた」
「そうでもねぇよ」
「お前のそういう格好を見てると…」
何故かパズは台詞をここで区切った。シュルリと音を立ててネクタイを引き抜くサイトーをじっと見つめている。
「? 何だ?」
サイトーがパズに視線を向けると、パズは自分のこめかみを指先で叩いた。暗号通信を送る合図だ。
サイトーが回線を開くと、サイトーの電脳内にパズの合成音声が響いた。
≪お前のそういう格好を見てると脱がせたくなる≫
「………………それがわざわざ暗号通信で送ることか?」
半ば呆れながら憮然として呟くと、パズは可笑しそうに肩を揺らした。
「誰が聞いてるか分からねぇからな」
≪そういう台詞は女に言え≫
≪女は脱がすんじゃない。脱がせるもんだ≫
≪…コマシは言うことが違うな≫
≪そんな男が脱がせたがる相手なんて、そういるもんじゃねぇぜ?≫
≪男を脱がせて愉しいか?≫
≪お前を脱がすのが愉しいんだ≫
≪趣味が悪ィ≫
≪そうか?≫
シャツのボタンを外して再びパズの方を見ると、着替え終わったパズがベンチに腰掛けながらサイトーをじっと見つめていた。
「で? お前はそこで何をしてるんだ?」
≪隻眼のスナイパーによるストリップ・ショーの鑑賞≫
≪只見するつもりか? 安くねぇぞ≫
≪脱ぐのを手伝うってのは?≫
≪却下だ。危険極まりねぇ≫
≪あぁ…言い得てるな≫
パズはベンチから立ち上がると踵を返した。
「あ、そうだ。サイトー」
首だけ後ろを振り向いて、声をかける。
「何だ?」
≪続きは今度、ベッドの上で見せてくれ≫
「馬鹿」
小さな笑い声を残して、パズはロッカールームから出て行った。
Fin
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