不埒者どもに賜物を
ドアを開けるとサイトーが立っていた。
パズはそれをしげしげと眺め、口を開いた。
「お帰り」
サイトーは深く息を吐くと、顔をしかめて伏せた。
「…頼む、パズ。笑うか突っ込むかしてくれ。いたたまれない」
「まぁ…何があったか、大体想像はつくからな」
パズに促されて、サイトーはようやく玄関の中に入った。
肩に担いでいるライフルケースはいつもの通りだが、この日のサイトーの服装はいつもと少しばかり違っている。
「少佐、だろ?」
「あぁ」
草薙に拉致されるようにヌードバーに連れて行かれたサイトーは、「頭が寒そう」という(酔っ払った)草薙のありがたい心遣いにより帽子を賜ってきた。今の時期に街中でよく見かける帽子―所謂、サンタ帽である。
この時期はサンタの扮装で呼び込みを行う店員を良く見かけはするが、赤と白の派手な色彩の帽子を被っていればそれなりに目立つ。それでも律儀に草薙の言いつけを守り、サイトーはサンタ帽を被ってここ―サイトーのセーフハウスまで帰ってきたのだろう。途中で脱いでしまえばいいのかもしれないが、相手は特A級のハッカーだ。どこのカメラをハッキングして監視しているか分からない。
それを思えばこそ、パズは笑うことも突っ込むこともできなかったのだ。何しろ相手が悪すぎる。
「他の奴らは?」
「トグサが潰れて、ボーマが送って行った。イシカワとバトーはまだ捕まってると思う」
ちなみにパズは捕まる前に避難したクチだ。その辺りの要領の良さは9課随一と言ってもいい。
「よく帰ってこれたな」
「イシカワが逃がしてくれた。『待ってる奴がいるんだろ?』とか言われたが。お前、イシカワに何か言ったのか?」
パズの脳裏に、髭を擦りながらニヤリと哂うイシカワの顔が思い浮かんだ。
「いいや。お前に女がいるとでも思ったんじゃねぇのか」
「そんな風に見えるか?」
「ケツの辺りに色気が出てきたな」
「何だそりゃ」
サイトーは気付いていないようだが、パズとサイトーの関係はイシカワにばれてしまっている。
パズはサイトーとの関係を公言する気も隠す気もなく、仕事に支障が出ない限りは他人に口を挟ませる気もなかった。だからイシカワにばれたところで気にもしていないが、そのことでサイトーの機嫌を損ねることだけは避けたかった。
電脳内でイシカワに贈賄する酒を吟味しながら、サイトーとともに部屋の中へと入る。先を歩くサイトーの後ろ頭で、白いボンボンが揺れていた。
「で? サイトー・サンタは何をプレゼントしてくれるんだ?」
サイトーは立ち止まると、首だけ振り向いた。
「お前みたいな悪い男にやるようなものは何もないな」
「そうか」
パズは後ろからライフルケースを奪い取ると、床に置いて、サイトーを肩に担ぎ上げた。
「おいっ! パズ!」
サイトーの抗議も抵抗も意に介さず、寝室へと連れ込み、ベッドの上に放り投げる。そしてバウンドする身体の上に覆いかぶさった。
「それなら奪うまでだ」
「サンタから強奪する気か? 極悪人すぎるだろ」
「その通りだ。俺は『悪い男』だからな」
サイトーの上に馬乗りになり、サイトーの服を脱がしにかかる。
「プレゼントをもらって楽しい時は、やっぱりラッピングを剥がす瞬間だよなぁ」
「馬鹿! テメェ…止めろ!」
夏は肌も露わな服装を好むサイトーだが、寒い冬はがっちり着こんでいる。脱がすのに手間取っていると、一瞬の隙ができてしまった。
「いい加減にしろっ!!!」
「ぐ…っ!」
腹にまともに膝が入り、サイトーの横に転がり落ちる。
「とっとと寝ろ。酔っ払い」
腹を抱えてうずくまるパズにサンタ帽を投げつけて、サイトーは寝室を出て行った。
やがてバスルームの扉が閉まる音が聞こえてきた。
パズは起き上がると、ベッドの上に落ちていたサンタ帽を拾い上げ、ニヤリと微笑んだ。
サイトーがシャワーを浴びて寝室に戻ってくると、パズがベッドに腰掛けて待ち構えていた。
その頭にはサンタ帽が乗っている。
「サイトー」
「いらん」
サイトーはパズの台詞を即断でぶった切った。
「…まだ何も言ってないが?」
「俺が欲しいのは身体の休養だ。酒も飯もセックスも事足りてる。お前みたいな男をもらっても手に余るだけだ。どこか余所の女のところに行け」
サイトーが言ったことは、パズが今言おうとしていたことそのものだ。すっかり読まれてしまっている。
しかし、サイトーの返答もパズの想定の範囲内。
パズはふっと微笑むと、細い目をさらに細めて、サイトーを見上げた。
「本当に?」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………くそっ!」
サイトーは首にかけていたタオルをパズに叩きつけた。
パズはそれを難なく受け止め、手を伸ばしてサイトーの腕を掴む。そのまま引っ張り、サイトーの身体をベッドの上に引き倒した。
「メリー・クリスマス。サイトー」
「………まだ、クリスマスじゃねぇだろ」
「クリスマスにもう一度やるよ」
「いら………んっ!」
抗議の声はプレゼントのキスで塞いだ。
Fin
てる様からの10000Hitリクエスト/『パズサイでクリスマス』
リクエストありがとうございました。
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