もたらされた情報は大したものではなかったが、その対価を支払わない訳にはいかない。
パズはポケットからマネークリップで留めた札束を取り出すと、それがポロリと地面に落ちた。
「…用意がいいのねぇ」
床に落ちたコンドームを見つめて、情報提供者の女が妖艶に微笑む。
パズは何事もなかったかのようにコンドームを拾い上げポケットにしまうと、抜き取った紙幣を女に手渡した。
「あたし、アンタとなら寝てもいいわよ?」
「悪いがコイツを使う相手は決まってる」
「ステディ持ちなの? 残念」
「俺は同じ女と二度寝ることはない」
「あたしとはまだ一度もないわよ」
「気が向いたらな」
「冷たい人」
パズが店を出ると、ボーマが車で待っていた。今のやり取りはパズの目に乗って見ていたはずだ。
「ここもハズレのようだな」
「あぁ」
パズがシートベルトを締めたのを確認すると、ボーマは車を発進させた。
「今夜は早く上がりてぇ。次で当ってくれるといいんだが」
「さっき言ってたそれを使う相手のところか?」
「あぁ」
「もてる男はつらいねぇ」
パズの漁色ぶりを知っているボーマはからかうように笑う。
「お前はどうなんだ?」
「俺は色気より食い気」
「頭から女を喰うのか?」
「そう。バリバリっとな」
ボーマの冗句にパズも微笑む。
車窓を流れる街の景色は、夜の闇を深くしていった。
セキュリティを解除する音に続き、扉が開かれる。
「遅ェ」
「悪ィ」
サイトーは場を空けてパズを中に導き入れた。
「飯は?」
「食ってきた。酒は?」
「バーボンなら」
「上等」
そして、扉は閉ざされた。
Fin
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