「………パズ」
「何だ?」
「自分でやる」
「無理だな」
 行為が終わって息が落ち着くと、パズは一人で立てないサイトーをバスルームへと運んだ。
 適温に調節したシャワーを出し、その下にサイトーを立たせる。
 パズはその足元に跪くと、石鹸を手に取りサイトーの内部を洗い始めた。
 パズが吐き出したものや丹念に塗りつけたジェルの名残がどろりと流れ出てくる。太ももを伝うそれらの感触にサイトーは身体を震わせ、手を置いているパズの肩をきつく掴んだ。
「サイトー。右は構わんが、左は加減しろ。俺の肩が壊れる」
「お前がそれを言うか」
 サイトーはムッとして応えた。
「こっちは生身だってのに、手加減しねぇ馬鹿はどっちだ!」
「だから聞いただろうが。女みたいに扱って欲しいのかと。俺はお前に見合った扱いをしてやっただけだ」
「………これがか?」
「あぁ。これでへばるようなお前じゃねぇだろう?」
 パズの相手は生身のまま幾多の激戦を掻い潜ってきた猛者だ。軟弱な扱いは相手のプライドを傷つける。
「現にまだ元気じゃねぇか」
 洗浄のためとはいえ、内部を丹念に弄られ、サイトーのモノは半ば勃ち上がり始めていた。
「…出るもんなんてねぇよ」
「そうかな?」
 パズは躊躇いもなく、半勃ちになっているそれを口に含む。
「おいっ!」
 電流のような快感が背筋を駆け登ったが、もう応える体力もなく、それもそれ以上勃ち上がることもなかった。
「さすがに無理か」
「当たり前だ。馬鹿」
 その他の場所も綺麗に清めてバスタオルで包み、ソファまで運ぶ。
 腕を上げるのもしんどそうなサイトーに服を着せてやると、疲れ切ったサイトーは今にも眠りに落ちそうだった。
「…女にもこんなに甲斐甲斐しいのか?」
「まさか。置いて帰る」
「…酷ェヤツ…」
 ソファにその身体を横たえてやると、サイトーは目を閉じた。
「寝るなよ。風邪ひくぞ」
 パズはサイトーをそのまま残し、ベトベトになってしまった寝具一式を取替え洗濯機に放り込んだ。
 ベッドメイクをし直しソファに戻ってくると、サイトーはすっかり寝入っていた。
「………寝るなと言ったのに」
 仕方がないので、抱き上げてさっぱりしたベッドに運んでやる。
 毛布をかけてやると、寒かったのか、サイトーは包まるように身を丸めた。
「まったく…」
 あまりの警戒心のなさに呆れ、パズは溜め息をついた。
 この夜だって、始まりはナイフと銃の突きつけ合いから始まっているというのに。
 サイトーは女のことを口にはするが、別に嫉妬している訳でもない。ただ、自分も女のように扱われるのはプライドが許さないだけだ。
「…サイトー…」
 ゆっくりと短く刈った頭を撫でる。
 刃先と銃口の先にいて、多分この世で唯一パズを殺す技量と度量を兼ね備えた存在。
 二人の間には『愛』はない。
 しかし、『愛』ではない『何か』は存在する。
「サイトー…いい夢を」
 固く閉じた左目に口付けを落として。
 この果てに『愛』はなくても、『何か』が存在する限り、二人が離れることはない。



Fin







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