「身体は大丈夫か?」
「何とかな…」
 シャワーを浴びてさっぱりした身体をベッドに横たえて、サイトーは吐息を漏らした。
 いつも以上にありえない場所がしくしくと痛む。
「………何と言うか。お前は意外と優しかったんだな」
「…いきなり何だ?」
 思いも寄らないサイトーの台詞に、パズはぎょっとしたようにサイトーを見つめた。
「前戯のないセックスってのは思った以上に堪えると思ってな」
「そりゃあ、そうだろう。女はともかく、男は使用用途とは異なる器官を酷使するからな。丁寧に解さなきゃ、後がかなりキツイだろ」
「…そうだな…」
 パズとの行為の後、身体のだるさはいつも感じていた。しかし、思い返してみれば、痛みを感じたことはあまりない。
「………女もこうやって抱くのか?」
「…そうだな」
「それで一晩だけで済むのか?」
「一晩だけだから優しくできる」
「お前の優しさは一晩限定か?」
「酔えないからな」
 酒にも。女の身体にも。
 そう呟くパズの横顔が、サイトーには少しだけ寂しそうに見えた。
「………疲れた。俺は寝るぞ」
「あぁ。お休み」
 パズが照明を落とすと、パズが咥えている煙草の赤い火が灯ってみえた。
「………パズ」
「何だ?」
「………………いや。何でもねぇ。お休み」
 サイトーは寝返りをうつと、パズに背を向けた。
「…サイトー」
「…何だ?」
「今夜の酒は美味かった。ご馳走さん。久しぶりに酔えた」
 酒にも。セックスにも。
 その呟きはサイトーが聞けずにいたパズの答え。
 それが少し嬉しくて。そして照れくさくて。
 サイトーは眠った振りをして、返事を返さなかった。



Fin






斉藤鷹を様からのリクエスト/『サパっぽいパサ』
リクエストありがとうございました。





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