Make up Poker Face



 頬に伸びてきた手に、反射的に顔を背ける。
「…何だ?」
 サイトーが訝しげに尋ねると、女は気だるそうに頭を枕に預けたまま、手をシーツの上に下ろした。
「同じ顔だなと思って………」
 過去にサイトーと似た男と寝たことがあるのだろうか。
 どんな理由にせよ、サイトーにとっては関心のない事柄だ。女とサイトーの間にあるのは金銭のやり取りによる関係で、お互いの名前も知らないのだ。
 サイトーはベッドから下りると、床に散らばっている衣類を身につけだした。
「…良くなかった?」
 女の声がサイトーの背中に当たる。
「…悪くはなかった」
「良くもないってこと?」
「そうは言ってねぇ」
 サイトーのそっけない返事に、女は鼻を鳴らした。
「あなたってイく時も表情が変わらないんだもの」
 女は床に散らばる自分の衣類に手を伸ばすと、ポケットから取り出した小さなアルミ・ケースから名刺を抜き出し、サイトーに差し出した。
「私のアドレス。また呼んでよ。………その言葉が嘘じゃないなら」
 サイトーは名刺を受取ると胸ポケットに差し込み、女を残して部屋を出た。







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