「よぉ」
目を開けると、助手席にパズが座っていた。
「助手席に座ってるだけなのに、見える景色が変るもんなんだな」
パズが車に乗る時は運転席に座ることが多い。
ボーマと組む時は、ボーマがいつでもネットに接続できるようにするために。
サイトーと組む時は、射撃精度の高いサイトーの手を開けさせるために。
バトーほどの車に対する愛着はないが、どちらかといえば運転する方が好きだった。自分の行き先を人任せにすることが嫌なのかもしれない。
「………疲れてるんじゃねぇのか?」
パズの横顔にどことなく疲労の翳りを感じる。しかし、パズは首を横に振った。
「義体化率がお前とは違う。疲れとは無縁だ」
「身体はそうでも、電脳は…ゴーストは違うだろ?」
パズはほんの少しだけ驚いた表情を浮かべ、やがてそれを僅かな微笑みに変えた。
「…お前の言うとおりだ。だから癒されに来た」
パズがすっと手を伸ばす。指先がサイトーの右頬を撫で、顎の線を辿る。
サイトーのうなじに手を滑らせ、後頭部を掴むと強引に引き寄せた。
「…っ!」
運転席から無理やり身体を捻るように身を乗り出し、崩れかけの体勢をシートの間に腕を突っ張って何とか耐える。
「ふ…ぅ…」
息をするのもやっとという深い口付けに、サイトーの脳幹が次第に痺れていく。パズの荒々しい舌使いが、彼の飢えを表していた。
パズはサイトーの頭から手をどかすと、サイトーの両腕の間に手を差し込み、シャツの中へ滑り込ませた。その指先がすぐに胸の飾りに触れる。
「…ん!」
電流が走ったかのように、サイトーの身体がピクリと跳ねた。しかし、重なったままの唇はそのままで、口の端から伝った唾液がぽたりと二人の間に落ちた。
摘んで揉んで、押しつぶし、爪先で弾く。
身動きを制限された車内で、じれったいその感覚はサイトーの中の焦燥感を煽る。
「パズ………」
「…どうした?」
「早く…」
明確な快感が欲しい。言葉にしなくても、それは充分に伝わってきた。
「…あぁ、いいよ」
答えるパズの声も上ずり、サイトーと同じく余裕がないことを示している。
「こっちにこい。サイトー」
請われるままに、足を引き抜き、パズの膝の上に跨るようにしてパズの上に乗る。男二人分の体重を受け停めることになったシートが、軋んだ悲鳴を上げた。
そんな音に気を回す余裕もなく、パズは引き千切るようにサイトーの青いシャツを開き、むき出しの肩に歯を立てた。
「う…!」
痛みすらも快感に変る。
両手の親指で押しつぶすように胸の飾りを揉みあげると、サイトーの身体が面白いようにビクビクと痙攣した。
「感じやすいな」
「うるせぇ…!」
無駄口を叩く口を再び唇で封じる。
胸を弄っていたパズの手は脇腹を伝い、サイトーの皮パンツのボタンに掛かった。
「…何て脱がせにくいもん着てやがる」
「…破るなよ。イチモツ晒しながら車の運転なんて冗談じゃねぇぞ」
これではサイトーの中に入ることは諦めるしかない。
パズはサイトーのパンツのボタンを外すと、ジッパーを下ろして中のモノを取り出した。それはすでに熱く脈打ち、硬くなっている。
「キスだけでこれか?」
それは軽く扱いてやるだけで、すぐにでも弾けてしまいそうだった。
「…うるせぇ…うっ!」
パズは手でサイトー自身を弄りながら、サイトーの胸の飾りを舐め上げた。ドックタグの鎖が、パズの耳元で音を立てる。
サイトーはシートの背もたれごとパズの頭を抱えるようにして、腰と胸から快楽が伝播して震える身体を支えた。腰から力が抜けて、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
「…おい、サイトー。お前だけ愉しむつもりか?」
「…分かってる」
サイトーは上半身を軽く起こすと、パズのシャツに手をかけ、力任せに引き千切った。
「乱暴だな」
口ではそういうが、パズは明らかにこの状況を愉しんでいる。
人工皮膚で覆われた胸元を撫で回し、震える指先でスラックスの前を寛げると、パズのモノも同じように硬くなっていた。
「サイトー。ちょっとだけ腰を上げろ」
浮いた腰の隙間から、パズは少しだけ身体を下にずらすと、己自身とサイトー自身をまとめて手のひらで包み込んだ。
「押さえててやる。お前が動け」
「…あぁ…」
サイトーはパズの両肩に手をつき、腰を使い出した。
くちくちと猥雑な音が二人の間から聞こえてくる。サイトーを見上げるパズの細い目は、愉しそうに笑っていた。
「なかなかいいな。上手いじゃねぇか、サイトー」
「黙れ」
ガチリと歯が当る嫌な音がした。
しゃべらせないように、舌を絡めて押さえ込む。
いつになく積極的に動くサイトーに、パズは飢えが満たされていくのを感じる。
空いた手でサイトーの腰を支えてやりながら、舌でサイトーの口内を撫でていく。どちらの唾液とも思えないものが、パズの細い顎を汚した。
濡れた吐息。粘液の擦れる音。シートの悲鳴。湿度が上がった車内。
限界は間近に来ていた。
「………は…っ!」
サイトーが放ったものは、サイトーとパズの腹、そしてパズの手を汚した。
荒く息をつく、その身体が唐突に跳ねる。
「パズ…っ!」
パズの指先がサイトーの放った粘液を塗りつけるように、くるくると先端を撫で回している。
「イったばかりの時はよせって…!」
「俺はまだイってねぇ」
「あっ! う………」
「一人で終わるな。まだだ。サイトー…」
車内の温度がさらに増した気がした。
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