パズの口内がアルコールの芳香に満たされる。
 パズは二人掛けのソファの中央にゆったりと腰掛け、腕を広げるように背もたれに手を置いて、その味わいを楽しんでいた。
 そのパズの膝の上を跨ぐように、グラスを手にしたサイトーが乗っている。
 少しずつウイスキーを口に含んでは、パズに口移しで飲ませていく。
 時々サイトーの舌が誘うように掠めるが、パズは何もしない。最初の約束どおり、パズの方からサイトーに触れることはしなかった。
「…どうだ?」
「あぁ…美味いな」
 サイトーの頬がほんのり赤く染まっているのは、アルコールのせいだけではないだろう。
 羞恥で身を染めているサイトーを眺めるのは、想像以上にくるものがあった。
 抱きしめたい。この青いシャツを引き千切って、その引き締まった肉体に貪りつきたい。
 そんな嵐のような欲求を内に秘め、パズは堪えるように背もたれを握る手に軽く力を込めた。
「…最後だ」
 サイトーはグラスに残った酒を煽るように口に含むと、パズの口を塞いだ。
 サイトーの唾液と共に流し込まれるアルコール。酔うには充分で、そして体内に灯った火を消火するには不十分だった。
「…サイトー。触っていいか?」
「ダメだ!」
 拒絶の言葉は思っていた以上に強い口調で返ってきた。
 このままサイトーに触ることが許されないのは、下手な拷問よりもキツイものがある。
「サイトー」
「ダメだと言ってんだろう!」
 サイトーは怒鳴るように叫ぶと、予想外の行動に出た。
 サイトーはグラスを床に投げ捨てると、引き千切るように青いシャツを脱ぎ捨てた。そして、同じようにパズのシャツの胸元を乱暴に割る。
「サイ…」
 パズの言葉は荒々しい口付けに途切れた。
≪触るな!≫
 サイトーの腰を抱こうと浮いたパズの手が、電通による一喝でソファに縫いとめられる。
 サイトーの舌がパズの口内を蹂躙し、やがて離れていった。
「…クソッ…!」
 サイトーは吐き捨てるように悪態を吐くと、パズの膝から下りて床に跪いた。
「パズ。俺に絶対に触るなよ」
「分かった」
 ソファに腰掛けるパズの前に跪いたサイトーはパズのスラックスに手をかけた。ベルトのバックルを外し、前を寛げる。
 取り出したものは熱を帯び、既に硬くなっていた。
 生々しく脈打つそれにサイトーは唇を寄せる。
 サイトーの頭上で、パズが息を呑むのが分かった。パズのモノを咥えるのはこれで二度目。やはり気分のいいものではなかったが、前ほどの抵抗を感じることはなかった。
「ん………んぅ………」
 口に余る大きさのモノに、サイトーの口の端から苦しげな吐息が漏れる。
 パズはサイトーの短く刈った頭を撫でてやりたかったが、触ることは禁止されている。
 自分の足の間で揺れるサイトーの頭を見つめ、パズは熱い吐息を漏らした。
 硬さを増したパズのモノから口を離し、サイトーは立ち上がって下着ごと皮のパンツを脱ぎ捨てた。
 パズの目の前に晒されたサイトーのモノも立ち上がっている。
「…パズ。ローションは?」
「手近な場所にはねぇな。…それでも使え」
 パズが指差したのはテーブルの上に添えられたオリーブオイルの小瓶で、白身魚のマリネ用のドレッシングとして置かれていたものだ。
「あれをか?」
「食用油なら人体に影響はねぇだろ。で? 俺に挿れるつもりなのか?」
 サイトーの行動はいつもとは真逆のパターンだ。サイトーがパズをリードしている。
「…挿れて欲しいのか?」
「初めてだから、優しくしてもらえるなら」
 パズの言葉に嘘はない。スケコマシとして名うてのパズも、流石にその身に男を受け入れたことはまったくない。
「お前も男を抱いたことはなさそうだな」
「ないな」
 男ばかりの軍隊に長くいたが、合意の上で深く繋がったことは一度もない。
 パズとの経験が初めてのことだ。
「気にするな。最悪、義体を換装すればそれで済む。お前がやりたいようにやれ」
「…分かった」
 サイトーはテーブルからオリーブオイルの瓶を取り上げると、再びパズの膝の上に跨った。



  



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