やっと唇が開放され、サイトーは大きく息を吸い込んで、酸欠気味の電脳に酸素を送り込んだ。
 すると、目の前のパズの頭がすっと沈んだ。跪いたパズが躊躇なくサイトーのモノを咥える。
「…おいっ!」
 用を足した後だとか。シャワーも浴びてないとか。
 あまりの衝撃に言いたい台詞も出てこない。
 電流のように全身に伝わる刺激に身を震わせて、唇を噛んで、漏れそうになる嬌声を辛うじて止めた。
「ん…んっ…」
 抗議も意味も含めて、パズの髪をきつく掴む。しかしパズは少し顔をしかめただけで、サイトーへの愛撫を止めようとはしなかった。
 うるさいほど聞こえていた音楽はもう聞こえない。サイトーの耳に届くのは猥雑な水音だけ。
 しかも限界に来ていた。
「…パ…ズ………も………イ…」
 達しようとしたその時、不意にパズの愛撫が止んだ。サイトーの口から不満げな呻き声が漏れる。
「ちょっとそのまま待ってろ」
 パズは立ち上がると、サイトーを残して個室を出て行ってしまった。
 中途半端なまま放り出されて、忌々しげにサイトーは舌打ちした。パズが戻ってくる前に自分で処理してしまおうと己のモノに手を伸ばしかけた時、パズが戻ってきた。
「そのまま待ってろと言っただろう」
 パズは左手の手のひらに、何かを乗せていた。それが何か確認できないまま、片手で身体を反転させられる。
 皮のパンツが引っかかったままの足が縺れたが、冷たいタイルに手をついて、何とか転倒を免れた。
「ぅわ…!」
 パズに向かって突き出した形の尻に、何か冷たいものが塗りつけられる。
「何…?!」
「安心しろ。手洗い石鹸だ」
 洗面台に備え付けられている液体石鹸を手のひらに酌んできたらしい。それを潤滑油代わりに使うつもりのようだ。
 石鹸の滑りを借りて、パズの指がサイトーの中へ潜り込んでくる。
「か…はぁ…っ!」
 唐突な異物感にサイトーは息を詰まらせ、苦しげに声を漏らした。
 もう周りのことなど、気遣う余裕もない。
 パズは空いている手でサイトーの腰を支えてやりながら、中を丁寧に解していった。酔いが回っているらしく、サイトーの内部はいつもよりも熱い。熱で指が蕩けそうだった。
 指の本数を増やして十分に解すと、パズは指を抜き去り、代わりに自分のモノをそこに押し当てた。その感触にサイトーが息を呑む。
≪サイトー。パズ。どうした? 何かあったのか?≫
 電脳内に響くイシカワの声に、サイトーは我に返った。
 サイトーの戻りが遅いため、心配して電通を送ってきたようだ。
「…が…っ!」
 次の瞬間、パズのモノに最奥まで貫かれ、裂かれるような痛みにサイトーは悲鳴を上げた。
≪サイトーなら少々飲みすぎたようだ。今、便器に戻してる≫
 パズは小刻みに腰を使いながら、何事もなかったかのようにイシカワに電通を送っている。
≪映像と音声は勘弁してやってくれ≫
≪戻してるところなんぞ、別に見たかねぇよ≫
≪だろうな≫
≪メスゴリラは適当にあやしておく。本当に具合が悪そうなら、こっそり裏口から送ってやれ≫
≪あぁ、そうする≫
 パスは会話を切り上げると、電通を自閉モードに切り替えた。
「…だそうだ。具合はどうだ? サイトー」
「…てめ…! ふざけ…うぁ!」
 会話中焦らすように蠢いていたパズのモノが、サイトーのイイ場所を穿ち、サイトーは思わず声を上げた。
「良さそうだな」
 パズは小さく笑い、そのままその場所を突き上げる。
「あっ…! ぅあ! あ!」
 サイトーはパズの動きに合わせるように声を漏らす。何かに縋るように、タイルの壁に爪を立て、音を立てて引っかき続ける。
 一度中断されて萎えていた快楽が蘇り、サイトーは再び絶頂に達しようとしていた。
 もう何も聞こえない。
 肉を打つ音も。自分の喘ぎ声すらも。
 感じるのはパズの熱が与える悦楽だけ。
「………パ………ズ………」
「サイトー! いつまで吐いてるんだ! 内臓まで吐き出すつもりか〜?!」
 男子トイレに響き渡る酔っ払った草薙の怒号。
「少…っ?! うぁ…っ!!!」
 最奥まで突かれて、一気に抜きとられる。
 その感触にサイトーは絶頂に達し、壁のタイルに情欲を吐き出した。
 パズの手がサイトーの腰から離れる。支えを失い、サイトーは床に膝をついた。
「サイトォォォォォ!!!」
 遠ざかる意識の中で、草薙の声が尾を引くようにいつまでも響いていた。



  



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